検査しなくても安心できる鰻をめざして

 中国産のうなぎ蒲焼は昨年4月末 「水銀残留で危険」 との報道で、 消費者の不安を買い、 夏は最盛期にもかかわらず販売量が半減する事態となりました。 この報道そのものは厚生労働省が定めた暫定基準値に照らし違反していないにもかかわらず 「水俣病」 などの記憶と重ね合わせ消費者の危機意識をあおり、 もって輸入うなぎを抑止しようという意図どうりの結果になったと言えます。
 しかしながら私共輸入者は中国のうなぎに指摘されるような事実があることを重く受けとめ、 それを改善して安全なうなぎを供給することで消費者の信頼を回復することに取り組むことを昨年5月の組合総会で確認しました。
 確かに中国の養鰻業はこの15年で目覚ましい発展をとげてきました。 1989年に活鰻でオキソリン酸が残留している事件があり、 薬品の使用基準など含め安全性の確保でひとつの転機であったのですが、 その頃の日本への輸出量は1万トンほどでした。 しかし、 その後右肩あがりで発展し、 2001年の輸入量は11万トンを超える迄になり日本の総消費の80%を占めるほどになりました。 この間全く新しい養鰻家が生産を担うことでかつて安全性の確保に失敗した経験・教訓が引き継れることなく、 ただ作れば良いという安易な傾向にあったことは事実であり、 業界人として私共も大いに反省しなければならないことでした。
 そこで昨年6月、 8月と北京の業界代表や関係の行政官庁と協議を重ね養殖池における安全性の確保をいかに実現するか、 というところから再出発を計って参りました。
 そして農業卸・商品検験局などが中心になり全業界が協力して養殖池の登録制度を推し進め、 水質の調査、 薬品管理責任者の設置そして養殖記録の実施・保管などの検査項目を満足するよう強力な指導を徹底してきました。 一方、 蒲焼加工場には、 必ず原料をこの登録済み養鰻場から購入すること、 その原料が安全であるか否かの検査が適正に実施されていることを輸出工場の条件にする、 などの指導がなされました。
 私共輸入者はこの動きを支持し推しあげてゆくことも意図し、 安全認証制度を立ちあげました。 具体的には中国の加工場での3回の自主検査と日本に輸入時に日本の検査機関による全ロットを対象にした自主検査を義務づけ消費者に安心して頂く体制を作りました。もちろん、 当組合内の 「安全鰻加工品製造工場認証審査委員会」 が工場を訪問し現場で認証基準に合致しているか否かを調査したうえで、 「認証」 し、 その後日本の検査機関四団体による 「検証」 作業や技術的指導を行ない安全性を確かなものにすることを骨格としております。
 中国の養鰻の実情からして、 過去に使用された恐れのある薬品が残留している可能性もあり、 過渡的にこのような厳重な検査を実施する、 という方法を採らざるを得ませんでした。 今春池入された白子が製品になって輸出されてくる来年度は大部分が薬品や重金属の残留がない 「きれいな鰻」 に生まれ替るだろうと思っています。 つまりこの安全認証制度は逆説的ですが1年でも早く不要になり廃止されるべき制度であるとも言えます。
 数年後には全く検査をしなくても全ての中国うなぎが安全であるような業界にするために、 あえて越えねばならない高いハードルを設けました。 何とぞ事情御賢察のうえ御理解と御協力をお願い申しあげます。

平成15年3月10日    
                               日本鰻輸入組合     
                               理事長  森山 喬司  
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